10月
13

ゼリ→ 20th ANNIVERSARY LIVE “BAD PHILOSOPHY” 2019年10月13日 at マイナビBLITZ赤坂 ライブレポート

Written by takashings posted on 10月 13, 2019 in ライブレポート

10年ぶりの再始動は興奮と若干の不安が入り交じった夜だった。
2019年10月13日、ロックバンド・ゼリ→の10年ぶりのライブ「20th ANNIVERSARY LIVE “BAD PHILOSOPHY” at マイナビBLITZ赤坂」のライブレポートをお届けしたいと思います。

2009年に解散を余儀なくされたロックバンド・ゼリ→。解散から10年、2019年に2020年までの期間限定で再始動が決定するも、ボーカルYAFUMIの「単独反抗」と題した発表だった。解散後の復活は喜ばしいものの、ライブ前からは「なぜオリジナルメンバーでの活動再開ではないのか?」と賛否両論が巻き起こっていた。

純粋に復活を喜ぶ人、オリジナルメンバーでの活動ではないことに怒りや不安を覚える人、YAFUMIのソロ活動ながらもかつての音楽を聴きたい人。様々な思いを胸に、バンドの聖地である赤坂BLITZ(現・マイナビBLITZ赤坂)に多くのファンが集まった。奇しくも、大型の台風19号が過ぎ去った翌日であり、何かが始まる予感がする、というのはなんとなく感じ取れた。

台風による交通機関の運転休止などで多くの人達が来られないとSNSで嘆く人々が多かったが、フロアはそんな風には思えないほどファンが詰めかけていた。フロアをある国は人を避けないと進めないほどの混雑。多くの人の熱気と不安が入り交じっていた。

開演時間が迫るにつれ、心臓が高鳴っていくのがわかる。場内の音楽のせいではない、確実にこれから始まるステージで何が起こるのか。その不確かなものに対する期待と若干の不安。オリジナルメンバーではないステージは誰しもが初めてなのだ。

そして、開演時間の18時を8分超えた時、照明が落とされる。SEはもちろん「Surfin’ U.S.A」。爆音が鳴り響き、会場の熱気が一気に高まる。パンクキッズたちは手を上げる。

サポートドラムのISHIMARU(元SNAIL RAMP)から爆音のSEを割いてスタート。1曲目は「RODEO RADIO」。ステージバックに「ゼリ→」の垂れ幕が上がっていく。ついに始まったのだ。曲が始まるなり、モッシュするファンが後を絶たない。10年ぶりとは思えないほど慣れている感じでYAFUMIが歌えば、会場はうねり始める。2曲目は「NO THANKS BLUE GHOST」。いつもの流れだよね、とあの頃を思い出す。「HEY HEY HEY」のかけ声が気持ちが良い。「光を放つように」では、何かの意味を持っているかのようにYAFUMIの歌い方もグッと締まって聞こえた。

間髪入れず、俺たちの始まりの歌「ROCKER」は明らかにテンポが過去のライブよりも高速で、まるでマシンガンで撃たれているような感覚に。そして誰も予想だにしない「JET GLASS」では黄色い歓声とテンポアップの曲に乗り遅れないように必死なファンの二分されていた。

ISHIMARUのバスドラムが繰り返され、「B・A・D!B・A・D!」と拳を上げる。「BAD AS I WANNA BE」だ。「素晴らしく悪いことをしよう」「無責任な歌を広める」の歌詞は今回のライブタイトルである「BAD PHILOSOPHY」に通ずるものを感じる。

サポートギター・勝田欣也(STANCE PUNKS)の刻まれるギターで「FIRE ARROW」が放たれる。10年ぶりの炎の矢はまだ燃えていることを証明するかのような目つきだったYAFUMIが印象的だった。「7 SECONDS TIME BOMB」「ALL STAR」とライブには欠かせない曲が続き、「MY WAY」が始まる。途中の音響トラブルでYAFUMIのマイクから音が出なくなり、勝田欣也のマイクを借りる一幕も。

「いつの日か老いぼれて 逃げ腰になる日がきたら 手の中に隠してあるナイフで 俺を殺してくれよ」と歌詞を叫ぶYAFUMIに自分はハッとした。彼はずっとこれまでこの歌詞を貫いていると思った。どんなに逆境であろうと、YAFUMIは新しい音楽や活動、ステージを見せてきたのだ。

そんなことを思っていたら「HOWLING SUNDAY」が始まる。「良い流れだね」と息の合った手拍子に楽しそうな顔をしていた。

ここで今回のライブの唯一のクールダウン。「大切にしていた曲」とYAFUMIが話して「体温計」を披露。じっくりとコーヒーを淹れるように、丁寧に、一言一言をファンに伝えながら歌っていた。

しかし、そのクールダウンもつかの間「次の晴れた日に」へ。そして、ファンの中でも名曲と名高い「イナズマ」へ。この曲に胸がグッと来る人も多いだろう。かく言う自分もこの曲に声を詰まらせた。周りの人も泣いている人もいて、改めてこの曲の存在の大きさを知った。

そしてライブには欠かせない「アロワナ」に続いて「sex on the beach」へなだれ込む。まさかの選曲に沸き立つフロア。テンポも増し増しでモッシュが止まらない。さらに「Freedom will be there」とおなじみのナンバー。曲中、YAFUMIがスピーカーの上に登り、ジャンプする場面もあり、ファンとしてはヒヤッとした(過去にYAFUMIは大型スピーカーから飛び降り、両足骨折した過去があるのだ)。ゼリ→には欠かせない「VELVET SNOOZER」も続き、完全にYAFUMIはあの頃と変わらないことが完全に証明されたと思う。

ここでYAFUMIが10年前のゼリ→解散の話を語り出した。

「このプロジェクトは去年に始まった」
「もちろんその時は4人で始めるつもりだった」
「しかし、とあることがあり、それが叶わなかった」
「何度も何度も話し合ったが、それが変わらず、叶えられない」
「その時にYAFUMI自身が1人でやろうと決めたこと」
「1人でやるのもゼリ→らしいな、となったこと」
「こういう活動が正しいことかはわからない」
「プロジェクトの話をコーヘイに伝えると、誰よりも先にやりたいと申し出たこと」
「コーヘイは10年という時が経っていても、気持ちはあの頃から何も変わっていなかったこと」
「YAFUMIはコーヘイのことをずっと気にかけていた」
「自分は死ぬ気で、命をかけて1人だけど、やっているということ」
「そんな中で今の俺が何かを歌えるんじゃないかと思って、始めた」

断片的なワードで申し訳ないが、MCで真摯に、初めてゼリ→解散の話を語った。MC中もファンは「待ってたよ」という言葉に対して「ありがとう」とホッとする場面もあった。

「これが正しいことかどうかはわからない」と話していたYAFUMIだったが、それはファンも同じ気持ちだったはず。オリジナルメンバー全員が集まっていないにも関わらず、ソロで再始動というのはおかしな話という人もいるだろう。だけど、YAFUMIの言葉を信じて、このステージを観に来たのだ。そんな中で彼の言葉で「違和感を感じていた」人に対しての誤解が解けたと思う。

MCの思いを踏まえた新曲である「キミのヒビ」が披露される。Bメロの「RADIO RADIO RADIO」と繰り返すのが印象的な曲だ。改めてこの曲を音源として聴くのが楽しみだ。

ゼリ→のライブには外せない「おもちゃのピストル」。「左手に不安を抱え、右手に祈りを込めた」の歌詞は今のYAFUMIとファンの心境でもあるのだと歌っていて感じた。ラストは「LONDON NIGHT MOVIE」で終わりを迎える。終わりの曲だが、終わりではないぐらいに熱く、拳を挙げるファン。「まだ死んでねえからな!」とアンコールを予期するかのようなYAFUMIの叫びと共にステージからメンバーが去り、照明が暗くなる。

すぐさまアンコールの声が始まる。「もちろんだ、こんなもんじゃねえだろ!」とメンバーを1秒でも早くステージへ戻そうとする。気迫がすごく、スタートからの熱気が止まない。

アンコールに戻ってきたメンバーからの最初の曲は「Silver fox falls into the pitfall」だ。この曲だと知っているかのように冒頭の「I’ll never forget fuckin’ shit.」はみんな息がぴったり拳を挙げて盛り上がる。曲中のジャンプも、拳を挙げることも、全てが10年ぶりとは思えないほどの盛り上がりだ。

そしてアンコールを呼んでくれたファンに「年末に新譜がリリースすること」「年明けにツアーをすること」が告知された。これにはファンは喜びを隠しきれずに大きな声が巻き起こった。どれだけ待ち望んでいたことか!という反響を感じられた。

その流れから「結局は立ち上がるか、立ち上がらないか。それだけなのかもしれません」とMCから「VOLVO PUNK」へ。歌詞にある「立ち上がれ 立ち上がれ 立ち上がれ HEY BROTHER!!」はどこか長い時を経てやっと会えた仲間との合い言葉のようなものを感じた。やっと会えたな、これからもまだまだ続くからと再開を願うような。

だが、こんなもんじゃ終わらない…はず。ステージから去ったメンバーをすぐに引き戻すアンコールはまだまだ止まらない。すぐに出てきたメンバーに反応して「頭がいかれた!」とフロアからはもう1つライブには欠かせない曲のリクエストが早速。「わかっているよ」と言わんばかりにYAFUMIがタオルで頭を隠しながらゆっくりとマイクスタンドに戻ってくる。「頭がいかれたー!」と大声で叫べば、ファンはスタンバイ済みであることを伝えるために拳を高く挙げて叫ぶ。ラストは「NITRO GANG」。超高速のテンポで始まり、水を得た魚の言葉通りにモッシュするファンが続出。最後の曲に全てを出し切るようにステージもフロアも全力で、死ぬ気でぶつかり合う。そして、(高速というのもあるが)一瞬にして終わった曲と共にYAFUMIはステージを去り、サポートメンバーもステージを去る。

轟音のハウリングが鳴り響くステージ。音が止んだとき、歓声と拍手が巻き起こる。奇跡の一夜が終わったのだ。

ライブ前に抱えていた不安は終わった後にはどこにもなかった。ゼリ→として期間限定ではあるが、しばらく目が離せなくなるバンドがまた始まるのだ。
「YAFUMI 単独反抗」と題された発表の意味が今日のYAFUMIのMCからわかった気がする。いつだって彼は何かに立ち向かい、何かに反抗して、何かと戦っている。そんな彼の反抗にもうしばらく付き合ってみたいと思う。例えオリジナルメンバーではなく、1人の活動だとしても。
今日のライブを観た人たちは少なくとも、そう思ったはずだ。過去の曲で何か「抗うべきもの」を壊すために、そのために「今の彼にしか歌えない歌」を力強く歌っていた。彼のステージパフォーマンスは飄々としながらも、フロアを見つめていた目の中には必ず命の火が灯っていたのを僕は見逃さなかったし、忘れない。

あと、1つ付け足して言いたいことがある。今回のライブは1stアルバムである「RODEO GANG」からの選曲が多かった。その曲たちの歌詞を振り返ってみると、今日のこの日のために作られたのではないかと思うぐらいにビシッと今に合ったものばかりだった。今日のゼリ→メジャーデビュー20周年の記念ライブでは昔も今もゼリ→は変わらないということも証明したかったのではないかと思った帰り道だった。

セットリスト

  1. RODEO RADIO
  2. NO THANKS BLUE GHOST
  3. 光を放つように
  4. ROCKER
  5. JET GLASS
  6. BAD AS I WANNA BE
  7. FIRE ARROW
  8. 7 SECONDS TIME BOMB
  9. ALL STAR
  10. MY WAY
  11. HOWLING SUNDAY
  12. 体温計
  13. 次の晴れた日に
  14. イナズマ
  15. アロワナ
  16. sex on the beach
  17. Freedom will be there
  18. VELVET SNOOZER
  19. キミのヒビ(新曲)
  20. おもちゃのピストル
  21. LONDON NIGHT MOVIE

ENCORE

  1. Silver fox falls into the pitfall
  2. VOLVO PUNK

ENCORE 2

  1. NITRO GANG


この記事をシェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加